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INTERVIEW

未来志向のものづくりに出会えるイベント「DIALOGUE」。主催者インタビュー

「工芸を“未来志向”のものづくりへ」というキーワードのもと、手しごとを中心としたものづくりの新しい在り方を探っていくためのプロジェクト「KOUGEI NOW」。その活動の一環で、2018年3月17、18日に「Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE」が開催される。ホテルカンラ京都の客室やエントランスを舞台に、作品やプロダクトの展示販売のほか、BtoB向け工場見学ツアーやトークイベントも行う予定だ。開催の経緯やコンセプトについて、「ホテルカンラ京都」総支配人の友岡大輔さんと、当サイトの編集長であり「KOUGEI NOW」ディレクターでもある山崎伸吾に話を聞いた。

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KOUGEI NOW 2018
Kyoto Crafts Exhibition “DIALOGUE”
「未来志向のものづくり」を意識した作品やプロダクトが並ぶ展示販売会。2018年3月17日(土)18日(日)、「旅と工芸」をテーマに、ホテルカンラ京都にて開催。SANJIKU、金継工房rium、洸春窯、昇苑くみひも、薫玉堂、阪本 修、ハタノワタル、京竹籠 花こころ、中村ローソク、暮らすひと暮らすところ、POLS、ろくろ舎ほか、約60組が参加する。併せて、BtoB向け工場見学ツアーやトークイベントも行う予定。

180116_now01_02山崎伸吾/「KOUGEI NOW」ディレクター
1978年岡山県倉敷市生まれ。2012年より京都職人工房ディレクター。2016年11月、工芸に関するウェブマガジン「KYOTO CRAFTS MAGAZINE」を立ち上げる。同年、「KOUGEI NOW」をスタート。

工芸へ熱い視線が注がれる今開かれる、ホテル型展覧会

 山崎:2016年にスタートした「KOUGEI NOW」。今を生きる職人さんたちの現状を共有したいという思いから、第1回は丹後の丹後ちりめん、清水の清水焼、そして伝統工芸を支える道具材料という3つの切り口で、課題やアイデアを共有するサミットを開催しました。(関連記事:Kougei now -3つのテーマの工芸サミットの記録

職人さんたちにとって、次のものづくりの指針になるような企画や場があればという思いから、第2回目となる今回の「DIALOGUE」はホテル型の展示販売会はどうだろうと。海外、たとえばオランダの「ロイドホテル&カルチュラルエンバシー」で2015年から開かれている「MONO JAPAN」は、日本のいいものをオランダに紹介するという企画展です。ホテルという空間でものを体感してもらう展示即売会。いつか京都でもやれたらいいなという思いが僕の心にあって、これを機にやろうと考えたわけです。で、そう思った瞬間、もう場所は「ホテル カンラ 京都」だと自分の中で決まったんですよ。工芸品のショップもあるし、金継ぎ工房(※)があるホテルって全国でもほかにはないですし。客室に置かれた湯のみに関して、お手伝いさせてもらったこともあって、ここしかないと。

※ホテル カンラ 京都の1階フロアには、職人が常駐する金継ぎ工房がある。ホテルの備品や、お客が持ち込んだ品を金継ぎで修復する様子が見学できる。

180116_now01_03友岡大輔/「ホテル カンラ 京都」総支配人
1982年大分県生まれ、埼玉県育ち。建設業からホテル業界に転職し、2011年に「UDS株式会社」入社。「ホテル アンテルーム 京都」支配人を経て、2015年より現職に至る。

友岡:客室の湯のみは山崎さんからの紹介で作家さんに作ってもらったものでしたね。「ホテル カンラ 京都」は感じる洛と書いてカンラ。京都に来ただけで終わりじゃなくて、ホテルにいても京都や日本の良さを感じられるホテルにしたいというのが根底にあります。ホテルの運営を考えると館内に木や石の素材を使うことは嫌がられるけれど、それをなくして日本のよさを伝えるのはどうかなと思う部分もあって。あえてそこはチャレンジしようという気持ちで、床にスレートを使ったり廊下に植栽をあしらっています。

伝統工芸品もそのひとつ。毎回来ていただいたお客さんに新たな発見をして欲しいので、フロアごとに作り手の異なる湯のみを置いています。それぞれの作家さんの作品は1階のショップで買えますし、もっと作品が見たいからと工房を訪ねる方もいらっしゃいます。それは伝統を守るという意味では、ホテルが寄与できた部分かなとも思っています。それもあって、今回このような話をいただけてすごく嬉しかったですね。

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ホテルカンラの各客室には、清水焼の陶芸家・岡山高大(「DIALOGUE」出展作家)のほか、作家ものの湯のみが置かれている。岡山高大 湯のみ 7,500円。

山崎:工芸の仕事をしているとホテルから、作家を紹介して欲しいといった問い合わせも多くて、去年は上海のホテルにも打ち合わせに行ったんですが、本物を使いたいという人がいて面白いなと感じています。なかでも「ホテル カンラ 京都」さんに紹介した方々は、簡単に探せる職人さんじゃないというか。問屋を通して販売はしているけれど、一人でコツコツやっている人が多い。そういう人がホテルの仕事に携われて、さらに工房を訪ねる人もいるなんて、紹介のしがいがありました。

友岡:それはホテルマンにとっても同じで、普段工房に行くこととかまずないですよね。それができるところが、カンラのひとつの良さでもあると自負しています。工房で実際に作られる現場を見て、いろんな話を聞いて、改めて作品の凄さや魅力がわかるというか。そういうことを重ねてこれが作られるのかとか、これは難しいだろうなとか、いろんな勉強にもなって面白かったです。

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「金継ぎ工房リウム」のマグカップ(左)と「SANJIKU」のネクタイ(右)。いずれのブランドも「ホテル カンラ 京都」と関わりがあり、「DIALOGUE」にも出展予定。金継ぎ工房リウム 金継ぎマグカップ 9,266円。SANJIKU ネクタイ 19,440円。

京都という都市型観光地で開かれることの意味

 山崎:京都って、泊まって工房を見に行くみたいな街のサイズが距離的にちょうどいいのかもしれないですね。都市型観光地だから、タクシーに乗れば1500円くらいで工房にいけてしまう。

友岡:そうですね、確かに。

山崎:ただ、普通の住宅が実は工房だったりするから、そのドアを開けるのはなかなか難しい。

友岡:だからこそ、ホテルという場所で工房見学が疑似体験できる「DIALOGUE」のコンセプトが面白いと思うのです。私どもは運営のビジョンのひとつとして、人やモノの価値を再認識できるホテルというのがあります。単に工芸品を客室の備品として見せたり、販売するだけじゃなくて、運がよければ作り手がいて、直接お話を聞けてという場を創出できるっていうのはすごくいいことだなと。正直な話、収益とかを考えると3月はシーズンでもあるので、そこは悩んだところではあります。けれど私どもにとっても多くの方に「ホテル カンラ 京都」を知ってもらうチャンスですし、ホテルのある五条界隈がもっと変わっていくという目標へ近づくことにもなる。それでいて伝統工芸品の魅力をきちんと伝えられる機会があるというのは、もう断る理由がありませんでした。

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出展ブランドの商品を手に取りながら語り合う友岡さんと山崎。

山崎:引き受けてもらえて、本当によかった。工芸イベントは各産地で行われていて、産業観光という言葉も生まれているくらい、ものづくりの現場を見に行くというのがすごく広まっていってるなあと思います。新潟の燕三条(関連記事:地域の魅力を体感するイベントが、地場産業復活の鍵になる −燕三条 工場の祭典 前編−)とか福井の鯖江・越前(関連記事:−「RENEW」福井県鯖江市 編−)、富山の高岡とか僕もよく行ってるんですが、そこには若い人たちもたくさん参加していて、朝集合して、昼間は工房見学をして、夜はおいしいものを食べて帰るみたいな。旅行のひとパックになっているなというイメージがずっとあって、少し前でいうとアートフェスに若い子がわーっと行ったことなんかに通じている。けれど京都でやるなら工房見学系のフェスではないなと。京都は旅の街でもあり、都市型の産業観光っていう意味でもホテル型にするのがいいなと思ってテーマを「旅と工芸」にしました。そう名づけてしまうほうが、京都に来てもらう理由が工芸になるかなというのもあるし、工芸を中心に京都を旅する部分があるのもいいと思っています。今回、客室も使っての展示は僕がどうしてもやりたかったことなんです。

京都は産地だからこその、ものづくりの鮮度があるし、職人に高確率で会える街でもあります。それが各地の職人が旅する理由になったら面白いなと。展示販売しつつ、展示会としてもやりたいので、B to Bみたいな流れも生まれて欲しいと思っているところです。

友岡:私はアートをテーマとした「ホテル アンテルーム 京都」の支配人を経験したこともあるので、山崎さんの言う「フェス」の感覚は共有しやすかったです。「DIALOGUE」での展示は、どんな空間演出をイメージしているんですか?

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ホテルの客室を使った展示方法も見どころの一つ。壁に掛けてあるのは、出展事業者のひとつ、加賀友禅のブランド「Ams, Tram, Gram」のストール。Ams, Tram, Gram ストール(左)32,400円 (右)30,240円。

生活に溶け込むシーンを想像させるホテルでの展示を

山崎:客室は出展者に自由に使ってもらえたらと思ってるんです。ホテルとはいえ住空間にほぼ近い雰囲気なので、工芸品を生活の中で感じてもらえるようなしつらえになればと。今、出展者へはたくさんの応募が来ているんですが、多種多様な方が応募されていて、陶器などの生活空間に合うものから家具だったり、西陣織の織り手さんだったり、京都以外の他府県からの応募もあります。根底にある未来志向のものづくり感が感じられる方や、若手の職人さん、伝統工芸の背景がありつつも違うものにチャレンジしている方が中心です。中には先に話した「MONO JAPAN」みたいな展覧会が京都でできるなら、と言ってくれる方もいて、思い描いていたことが共有できているように感じます。もちろん、ちゃんと成功させないとというプレッシャーもありますけど。

友岡:単純にここに人が沢山来てくださるということや、出展者の方々との交流にもワクワクします。

山崎:職人さんって無口なイメージがあると思うのですが、実はそんなことない方が多くて。尋ねればなんでも話してくれて、その言葉には説得力がありますよね。工房を訪ねてはじめてできる体験をここでしてもらえたら。海外の旅行者って京都に拠点を置いて、そこから金沢なんかの他の街に行ったりするらしいので「ホテル カンラ 京都」がそうなって、今回出展してくれた京都以外の方の地域に行ってくれるとまたすごくいい循環にもなりますしね。

友岡:私どももその後の繋がりができたら嬉しいと思ってます。作り手の方と一緒に企画して、新たな客室の備品を作ったりといった具合にね。そこで「ホテル カンラ 京都」が昇華し、変わって行けたらおもしろいなと思っています。ショップでの展示もそうですけど、もっともっといろんな方にここに自分の商品を置きたいと思ってもらえるとすごく嬉しいですね。

山崎:京都には沢山職人さんがいるけれど、それを知らないで歩くのと知っているのでは大きく違いますよね。例えば本願寺の周囲には仏具店が多いし、東山は陶磁器、御所の周りは装束。といった具合に街ごとに産地があるので、工芸マップも作りたいですね。

友岡:私自身も3月のイベントが待ち遠しくてしかたありません。

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ホテルカンラのエントランスにあるショップ。手仕事の作品やプロダクトを多く取り扱っている。

KOUGEI NOW 2018
Kyoto Crafts Exhibition “DIALOGUE”
会期:2018年 3月17日[土] 11:00~18:00 / 3月18日[日] 11:00~17:00
※3月16日は、招待客・プレスに向けた内覧会を行います。
会場:ホテル カンラ 京都(京都市下京区北町190)
URL:http://kougeinow.com
主催:京都府
共催:京都リサーチパーク株式会社 / ホテル カンラ 京都
協力:Design Week Kyoto実行委員会、CEMENT PRODUCE DESIGN、EXS.Inc、
KYOTO CRAFTS MAGAZINE、京都市、「伝統産業の日」実行委員会、D&DEPARTMENT KYOTO by 京都造形芸術大学

※価格はすべて税込みです。

INTERVIEW

TEXT BY MAKO YAMATO

PHOTOGRAPHS BY KUNIHIRO FUKUMORI

18.01.16 TUE 13:12

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