TOP CRAFTS NOW SHOP 工芸ショップ数珠繋ぎ Vol.6「やまほん」
普通の生活でこそ生きる、作家ものを探しに

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工芸ショップ数珠繋ぎ Vol.6「やまほん」
普通の生活でこそ生きる、作家ものを探しに

素敵な手仕事に出会える工芸ショップがたくさんある京都。この記事では、目利きの店主がいるショップを数珠繋ぎで紹介していきます。第6回目は、うるわし屋の店主・堀内正吾さん、明美さんが「私たちが好きな感じのものを、たくさん置いている場所」と、紹介してくださった「京都 やまほん」です。正吾さん、明美さんとともに、店主の山本忠臣さんを訪ねました。

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左から順に「うるわし屋」の堀内正吾さん、明美さん、「やまほん」山本忠臣さん

2017年、工芸店が連なる寺町美術通へと移転

「京都 やまほん」は伊賀に本店を構えるギャラリーショップ。2011年、五条高倉にオープンし、2017年6月に二条寺町のビルの2階へと移転しました。店内には、陶磁器から、漆器、木工まで、若手作家の作品を中心に、普段使いのうつわが並びます。

明美:やまほんさんはずっと気になっていたのですが、うるわし屋と定休日が一緒でなかなか行けていなかったんです。伊賀の本店の方には、MIHO MUSEUMに行った時、お休みだけど場所と建物だけでも見ようと、立ち寄ったことがあるのですが。

正吾:定休日に外から覗き見て、不審者のようだったかもしれませんね(笑)。最近、京都店が五条寺町からうちの近くに引っ越されてきたと知って、嬉しくてすぐに訪れたのです。

山本:前の店も気に入っていて、移転しようと思っていたわけではありませんが、たまたま良い場所に物件が空いたからと、声をかけられて移ってきたのです。

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山本さんは設計士でもある。

実家は製陶所。建築技術を生かしつつギャラリーオーナーへ

正吾:少し緊張感のある空間ですね。山本さんは設計もされると聞いています。このお店もご自身で設計されたのでしょうか?

山本:はい、そうです。もとは2部屋だったのですが、壁を抜いて1つの空間にし、窓を白壁で塞いで、床も左官仕上げにするなど、かなり大掛かりな改修を加えました。縦長の空間なので、スーッと歩いてしまいがちですが、アーチで溜まりを作って、作品をよく見てもらうような仕組みにしています。

僕は、18歳から23歳まで大阪の設計事務所や工務店に勤めていて、最初は設計で生計を立てていこうと思っていました。ところが、24歳の時、父が倒れたために、実家である伊賀の製陶所に帰り、しばらく兄と一緒に実家の手伝いをすることになったのです。ただ、設計士としての仕事も諦めたわけではなかったので、ひとつ自分の腕を試してみようと、実家の敷地内にあった倉庫を改装してみたのが、「やまほん」の始まりです。

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常設と企画展の空間では棚板の素材を変えている。

奇抜さや流行にとらわれない、上品なもののセレクト

明美:「茶箱」のセットを作っている中で、茶筅筒と茶巾が古いものだとなかなか見つからないなと思っていたところ、やまほんさんにあった吉田佳道さん作の茶筅筒が気に入って、求めさせていただきました。

正吾:やまほんさんは、取り扱っているものの感覚が僕ら好みなんです。シャープな線や、フォルムの美しさが共通してあります。作家さんには詳しくないので、有名な方なのかどうかはわからないですけど、ものから伝わる印象が洗練されていて、野暮ったくないように感じるのです。

明美:セレクトが落ち着いていて、古いものと合わせても違和感なく楽しめますね。どんな風に作家さんを選んでいるのですか?

山本:ギャラリーを始めて18年目になるのですが、最近は僕から行くよりも「見てほしい」と言って、作家の方から来ていただくことが多いのです。ただ、いいと思っても一度会っただけで取り扱うことはなかなかありません。その後、続けて来てくださる方と、来なくなる方がいます。時間をかけて、その人を理解した上で決めるのです。

作家を始めた直後というものは、右往左往してしまうものですが、そこから一歩踏み出し、強い覚悟と意思を持った人しか取り扱わないようにしています。

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金森正起「ホーロー ボール」

明美:やまほんで取り扱っている作家で、金森正起さんの作品が好きなんです。面白いですよね。

山本:鉄の作家ですね。彼は10年以上前からお客さんで来てくださっていて、最近扱うようになったのです。まっさらな鉄板を5年、10年仕込んで酸化させて、サビを浮かび上がらせ、時には穴もあいてしまったような、そんな鉄の持ち味をそのまま出したような作品を作りますね。彼のように長いスパンで物事を見られる作家はなかなかいません。

正吾:鉄鉢の古いのと、そっくりなものを作ってしまうので困ります。我々骨董業界にとっては、騙されてしまいそうな危ない代物です(笑)。

山本:唐津焼の作家さんも面白いですよ。昔の人は粘土じゃなくて、砂岩という石を砕いて唐津焼を作っていたと言われています。梶原靖元さんという作家は、その砂岩を使い、杉の皮を剥いて幹の部分だけを燃料の薪にし、登り窯で3時間くらいで焼成するというやり方で作陶しています。僕らが思っている焼き物の常識は昭和の桃山復興をベースにしていますがそれを疑い、自ら唐津焼の古典を探るようなことをしているのです。矢野直人さん、山本亮平さん、浜野まゆみさんなど、そういう新しい流れの唐津を模索している作家が梶原さん以外にも何人かいて、注目しているんです。

正吾:江戸初期のような、昔の趣がありますね。僕白磁といえば、鉄が入らない、混じり気がないものがいいものという風に京都では言いますけど、古い常識をあえて無視するというか、そうすると、こういう感じのいいものができるんですね。

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企画展スペースの展示棚は畳や木材など展示物によって素材が変えられるようになっている。

骨董を扱うこと、現代作家の作品を扱うこと

明美:東京の現代作家のものを取り扱うギャラリーの方にこう言われたことがあります。「私たちは作家さんに対してある程度売ってあげないといけないという責任があって大変なの。骨董屋は、作家は死んでしまっているんだから、気楽でいいわね」と。

正吾:パッと見た感覚で良いと思っても、贋作というか、「これ、全然古くないやん」ということが後から分かったり。

山本:そんな苦労があるのですね。僕自身の経験でいうと、生きている人間と仕事をするということは、衝突することもあり、ある程度感覚が近しい人じゃないとうまくいかないなというところはありますね。生意気だと思われてしまうことも少なくなくて。今年で44歳になり、やっと茶碗などが扱える年齢になってきた気がします。今後はそれがちょっと楽しみです。

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床に小石が五つ並べてある。

お店の入り口付近には、小石が並べてあります。これはどんな意味を持つのでしょうか?

山本:河原で拾ってきた、ただの石なんですけど……。工芸って、漆も陶芸も木工も、はるか昔から、やっていることがほとんど変わっていないですよね。見る人も作る人もある範疇の中で新しいことや発見をしています。それって、すごく大切なことだと思うんです。スマートフォンやパソコンなど、世の中はどんどん進化して便利になっているなか、地球にある素材で器を作るということが、今だに行われて続けている。それによって、人間の感性や感覚とかが保たれていると思うんです。石にはそういう、自然物への敬意を込めています。

50の作家を取り扱い、年間約15の展覧会を開催。様々なジャンルの生活工芸に出会える場所となっています。暮らしを豊かにするうつわを探しに出かけてみては如何でしょうか?

京都 やまほん
住所:京都市中京区二条通寺町東入榎木町95番地3 2階
時間:11:00〜18:30
休廊日:木曜
Tel:075-741-8114

※連載「工芸ショップ数珠繋ぎ」は、今回をもって終了となります。ご愛読いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

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TEXT BY AI KIYABU

PHOTOGRAPHS BY MAKOTO ITO

18.05.29 TUE 11:29

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