「ててて見本市」が示す手仕事の方向性
:出店者インタビュー(後編)

今年で6回目を迎える中量生産される『手工業品』のための展示会「ててて見本市」。
各地で小規模なものづくりを行う作り手と、販売を担うバイヤーの橋渡しをおこなってきたこの場は、現代の手仕事のあり方を提示する機会として内外から注目を集めている。

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「ててて見本市」が示す手仕事の方向性:出店者インタビュー(後編)

2017年2月8日〜10日、南青山・スパイラルホールで「ててて見本市2017」が開催された。
第6回となる今回は各地から100組の作り手が参加。来場者は3日間で3,270名を数えた。「中量生産・手工業品」をテーマに掲げるててて見本市らしく、地域の特性や手仕事の背景をも伝える製品の数々が出揃った。

 

■食と「ててて」

◆薬草が伝える古来の知恵

「現在、国内で流通している薬膳茶の9割が輸入品。各地域に根付いた伝統茶の良さをあらためて伝えたい」([tabel]代表・食卓研究家の新田理恵さん)

「現在、国内で流通している薬膳茶の9割が輸入品。各地域に根付いた伝統茶の良さをあらためて伝えたい」([tabel]代表・食卓研究家の新田理恵さん)

 

無農薬、化学肥料不使用で栽培された国産植物を使った伝統茶の試飲で好評だったのが、国産薬草茶ブランド[tabel]だ。代表の新田理恵さんは「薬膳・薬草と聞くと『苦そう、不味そう』というイメージですが、材料を厳選すればとても美味しいもの。それでいて健康にも良い。昔から伝わる知恵には、続いてきた理由があるんです」と話す。

「八代の日本古来のはすの葉茶」「石垣島の香り華やか月桃茶」「奈良高取寒さに負けない大和当帰茶」など新田さんが各地を巡り厳選した素材をパッケージ。薬草の効能を大切にして、加工はできるだけ産地でおこなうという。

「八代の日本古来のはすの葉茶」「石垣島の香り華やか月桃茶」「奈良高取寒さに負けない大和当帰茶」など新田さんが各地を巡り厳選した素材をパッケージ。薬草の効能を大切にして、加工はできるだけ産地でおこなうという。

 

「食品関係の展示会ではなく『ててて』に出展したのは、出展者と来場者が同じ価値観で繋がっているから。丁寧で持続可能な暮らしを目指すという共通項があるから、食器も雑貨も食品も隔てなく想いが伝えられる。今回で3度目の出展ですが、出展者同士の顔なじみも増えてまるで年に一度の同窓会みたいです。ほかの出展者さんに相談にのってもらうことも多く、パッケージの業者さんを紹介してもらったこともあるんでんすよ」

[tabel]
>> http://tab-el.com

 

◆「福岡の海苔」をあらためて発信

定番の「焼のり」や「味のり」のほか、焼のりを手で割き、炊き上げた「炊のり」など、海苔の味を知り尽くした生産者だからこそ生まれた商品が並ぶ

定番の「焼のり」や「味のり」のほか、焼のりを手で割き、炊き上げた「炊のり」など、海苔の味を知り尽くした生産者だからこそ生まれた商品が並ぶ

 

「福岡海苔」と大書された段ボールが積み重ねられ、会場内でもひときわて異彩を放っていたのが[江の浦海苔本舗](福岡県)のブースだ。来場者に海苔の試食を勧める森田修司さんは「焼きたての海苔の美味しさを実感してもらいくて、福岡を発つ直前に焼いてきたんですよ」と新鮮な海苔の味をアピールする。

試食したバイヤーから「ご飯が欲しくなるね」との声があがった

試食したバイヤーから「ご飯が欲しくなるね」との声があがった

 

かつては海苔漁師だった森田修司さん(写真左)。「もう一度食卓に美味しい海苔を」との思いから、生産・加工・流通に携わるようになった

かつては海苔漁師だった森田修司さん(写真左)。「もう一度食卓に美味しい海苔を」との思いから、生産・加工・流通に携わるようになった

 

「有明海で海苔がとれることも、その海苔が抜群に美味しいことも世の中に知られていない。そもそも海苔の味が産地ごとに違うことだって忘れられているでしょう。メーカーとしての販路開拓はもちろん大事ですが、この出展で『福岡海苔』を広く知ってもらうことが大きな目的ですね」

[江の浦海苔本舗]
>> http://enouranori.com

 

■ものづくりの背景

●建築と工芸

ドアの取手や引具、タオルハンガーなどの受注生産は[千 sen]の得意とするところ

ドアの取手や引具、タオルハンガーなどの受注生産は[千 sen]の得意とするところ

 

金工造形師、西本卓也さんと彫金師、長尾千さんのふたりが手がけるインテリアブランド[千 sen](京都府宇治市)は、真鍮を素材に照明や花器などを製作している。通常の製品ラインナップ以外にも、建築家からの受注生産にも対応しているため、「出展は技術の幅広さを提示する場でもある」(西本卓也さん)という。

[左]:吊り型や置き型など多様なインテリアにあわせた照明をラインナップ。[右]:真鍮製のピンなど、小物も並ぶ。)

[左]:吊り型や置き型など多様なインテリアにあわせた照明をラインナップ。[右]:真鍮製のピンなど、小物も並ぶ。)

「『ててて』には、昨年から出展していますが今回、会場が変わったことで来場者層が広くなりましたね。建築家や設計士、インテリア関連業の方などが多くお越しになるので、細かなオーダーに対する相談なども増えました。『ててて』の来場者はじっくりと会場を見て回る方が多いので、技法やデザインについてちゃんと説明できるのが良いところ。地方でものづくりをしていると、バイヤーさんや使い手の方としっかり交流できる機会はあまりありませんから」

[千 sen]
>> http://www.senkanamono.com/

 

●銅器着色のスペシャリスト

ブランド名の[tone]には、暮らしのなかで少しずつ変化する表情という意味を込めた

ブランド名の[tone]には、暮らしのなかで少しずつ変化する表情という意味を込めた

 

国内屈指の鋳物産地、富山県高岡市からは銅器の着色に特化した[モメンタムファクトリー・Orii]が出展。仏像や梵鐘などを仕上げる際に用いられる着色技法をトレーやワインクーラーなどに活用した「tone」シリーズは、銅素材のさまざまな表情を楽しむことができる。

ムラや発色などひとつとして同じ物はない。手仕事の痕跡が残るも銅器着色の魅力

ムラや発色などひとつとして同じ物はない。手仕事の痕跡が残るも銅器着色の魅力

 

「tone」のブランドディレクションとプロダクトデザインをおこなう[暮らすひと暮らすところ]の戸田祐希利さんは「高岡で培われてきた技と、その背景を知ってもらいたい」と話す。「高岡の銅器製造は無数のスペシャリストに支えられています。細かい分業工程が生んだ『着色』専門の職人技は、無限ともいえる銅の色彩を引き出します。金属の着色は劣化のようにイメージを持たれることも多いのですが、意図的に風合いを生む技があることを広く知ってもらいたいですね」

[モメンタムファクトリー・Orii]
>> http://www.mf-orii.co.jp

[暮らすひと暮らすところ]
>> http://www.kurasu-kurasu.com

 

■てててから生まれる

●火を灯すことの意味

米ぬかで作られたろうそく。現代的でギフトにもなるパッケージで手に取りやすい商品として展開している

米ぬかで作られたろうそく。現代的でギフトにもなるパッケージで手に取りやすい商品として展開している

 

創業1914年、曹洞宗大本山永平寺御用達として伝統的な和蝋燭を今に伝える和蝋燭の老舗、[大與](滋賀県)は今回が4度目の出展。伝統的な「櫨ろうそく」をはじめ、米ぬかから蝋成分を抽出した「お米のろうそく」、京都・清水焼の絵師がろうそくを彩った「絵ろうそく」などを揃えた。また、火と人の関係性をあらためて見つめなおすブランド「hitohito」のティーライトキャンドルなども展開し、ブースには和蝋燭の伝統と今が並んだ。

日常生活の中で火をつける理由に楽しさを加えた商品

日常生活の中で火をつける理由に楽しさを加えた商品

 

「昔と違って和蝋燭は生活必需品ではありません。だからこそ、こうした機会に和蝋燭の歴史や製法など広く知ってもらいたい。もちろん商売も大事ですが、それ以上に『生活のなかで火を灯すことの意味』を売り手や消費者の皆さんと一緒に考えなくちゃいけない。『ててて』は今回が5回目。ずっと『ててて』に出続けているのは、ここが売るためだけの場所じゃないからです」(大與 大西巧さん)

大與の四代目、大西巧さん

大與の四代目、大西巧さん

[大與]
>> http://warousokudaiyo.com

 

●小規模工房の年間スケジュール

草木染めで染色した手漉き和紙を使った線香花火や、火薬の調合で多彩な火花の色を用意した手持ち花火など多彩な花火が揃う。富士山のかたちをした花火(写真中央)は2017年の新作「花富士」。

草木染めで染色した手漉き和紙を使った線香花火や、火薬の調合で多彩な火花の色を用意した手持ち花火など多彩な花火が揃う。富士山のかたちをした花火(写真中央)は2017年の新作「花富士」。

 

創業90年の花火メーカー、筒井時正花火玩具製造所(福岡県)は今回が3度目の出展。国内にわずか3社となった線香花火製造元のひとつとして伝統技法を守りながら、花火の新しい楽しみを提示する。材料には「宮崎の松煙」「天然染料」「八女の手漉き和紙」と、近郊地域でとれるものだけを使い、「国産花火」の復権を目指している。

素材と製法をとことん追求した線香花火は贈答用や記念品としても人気

素材と製法をとことん追求した線香花火は贈答用や記念品としても人気

 

筒井時正花火玩具製造所の筒井今日子さんは、「毎年、『ててて見本市』が開催される2月に照準を合わせて新商品の開発をおこなっています。夏に需要が集中する季節商品なので発表にはちょうど良い時期ですしね」と話す。「商品開発には社外のデザイナーさんにも参加してもらっていますので、『ててて』は互いの年間スケジュールに組み込んでいます。うちのような小さな工房にとっては商品開発〜新商品発表〜商談〜繁忙期のサイクルを効率良く回すことが大事。『ててて』の出展をきっかけに雑貨・インテリアのみならずアパレル関係での取り扱いも増え、花火の販路・消費者層も大きく変わりました。今後も状況の変化に対応できるよう、柔軟な姿勢で臨みたいですね」

透明な天然繊維素のなかに着色した火薬が透けて見える「透花」

透明な天然繊維素のなかに着色した火薬が透けて見える「透花」

[筒井時正花火玩具製造所]
>> http://tsutsuitokimasa.jp

 

●ててての常連

輪島キリモトの7代目、桐本泰一さん

輪島キリモトの7代目、桐本泰一さん

 

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木製品・漆器製造販売の輪島キリモト(石川県輪島市)は、分業製作が一般的な輪島塗において木地加工から漆塗等を一貫製作する数少ない工房。その高い技術力と企画力を活かして伝代の暮らしに寄り添った器・小物・家具等をつくり続けている。また、近年は輪島産地の素材と技法を応用した建築内装分野も手がけ、『木と漆』の新しい可能性を拓いている。「ててて見本市」には第1回からすべて参加している常連だ。

建築内装材として壁面パネル。昨年、シンガポールの和食料理店のカウンターや壁面パネルを製作し内外から注目を集めた

建築内装材として壁面パネル。昨年、シンガポールの和食料理店のカウンターや壁面パネルを製作し内外から注目を集めた

 

「『ててて見本市』がスタートする以前は、小さな工房がバイヤーさんと密に交流する機会はほとんどなかった。零細工房が自己資金だけで出展でき、ものづくりの背景までをも伝えられる機会は貴重です」と話すのは輪島キリモト、桐本泰一さん。

「以前に比べ、手仕事とデザインの関係性はとても密接になりましたが、それを流通にのせるにはまだかなりの労力を要します。『ててて見本市』には、このままの質を維持しながら手仕事の流通・販売を変えていく役割を果たしていってほしい。なにも変わったことをする必要はないと思う。運営の4人の理念がしっかりしているから、これほど多くの出展者・来場者に評価されてきたんですから」

[輪島キリモト]
>> http://www.kirimoto.net/

 

前編はこちら >> 2017年ててて見本市、出店者インタビュー [前編]

SPECIAL

TEXT BY YUJI YONEHARA

PHOTOGRAPHS BY MITSUYUKI NAKAJIMA

17.03.16 THU 23:28

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