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INTERVIEW

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信楽の新たな可能性を探る。「NOTA & design」加藤駿介インタビュー

山と田に囲まれた土地に、海外のファクトリーを思わせるような洗練された工房&ショップをオープンした「NOTA&design」の代表・加藤駿介。滋賀県信楽町に生まれ、大学卒業後は東京に勤務するも2008年、地元へUターン。以来、今までにない信楽の魅力を打ち出そうとしている。現在33歳の代表・加藤が描く、信楽の未来とはどんなものだろうか。ライター・竹内厚がインタビュー。

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加藤駿介

1984年、滋賀県信楽町生まれ。京都精華大学在学中にIDEE experienceにてアルバイト勤務後、ロンドンにデザインを学ぶために留学。帰国後は映像制作、グラフィックデザインを現在のパートナーと開始。東京の広告制作会社に勤務後、地元である信楽に戻り、家業である「ヤマタツ陶業」にて陶器のデザイン、制作に従事。2015年、独立して、陶器を軸にしたライフスタイル全般のデザイン、制作販売業務を行なう「NOTA&design」を設立。2017年7月、信楽の工芸作家の作品、骨董品などを取り扱う「 NOTA_SHOP」を工房敷地内にオープン。

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2017年7月8日にオープンした「 NOTA_SHOP」。開放的な大空間。

―オープンしたばかりのショップとスタジオ、それぞれが想像以上に広くて、とても美しい空間に仕上がっていて驚きました。そして、ショップに置いてある信楽焼が意外に少ない。

 もともとはゴミ屋敷のようになってた製陶所なんですけど、それを仕事の合間に自分たちで改装してきたので、この場所を買ってからショップをオープンするまで3年もかかってしまいました。信楽焼に関していうと、焼き物の素材としての魅力はすごく感じているんですけど、僕は焼き物だけが大好きってわけではないんです。だから、信楽のことも焼き物の町というよりも、ものづくりの町として発展してほしいと思っています。

―焼き物の産地は全国にありますけど、焼き物ばかりが目に飛びこんでくるのが産地の常識です。

 僕の考えとしては、ここを信楽の外の人が行きたいと思える魅力的な場所にするのはもちろんですけど、焼き物だけではなく様々なものも置いて、地元の人にも見てもらいたいんです。実際、クラフトもデザインものもアートだってどんどんフラットになってきていますよね。地元の若い子がそれを見て興味を持つかもしれないし、そこから何かが変わるかもしれないですから。

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「 NOTA_SHOP」には自社プロダクトのほか、木工の福井守、大村大悟、陶芸の松本治幸、古谷宣幸・朱里などの作家物、古道具、洋服などが並ぶ。カフェやギャラリー的に使える空間も。

―そんな加藤さんは信楽焼の作家ではない。

作家と名乗ったことはありません。信楽焼で変わったものを作ってはいますけど、どこかで僕は産業ベースでものづくりを考えているので、1点モノの作品を作るということはしてないですね。ただ、「これって〇〇焼きですか?」って聞くのは日本人くらいのもので、海外だったら、そこは窯の名前だったりメーカーの名前になりますよね。アラビアとか、イッタラ社とか。信楽焼といってもいろんな作家さんやメーカーがあるので、それが信楽焼かどうかよりも、この信楽という土地で活動していることのほうが僕は大切だと思っています。昔だったら、産地といえば原料と燃料のある場所だったけど、今は、東京でだって信楽の粘土を買えるわけですから。

 ―加藤さんは大学を卒業後、東京の広告制作会社で一度働いて、地元の信楽に戻ってきたと聞きました。

 東京での仕事は、関わる人は多いけど、進行するにつれ熱が薄まっていく気がして違和感ばかりが募りました。これが焼き物だったら端から端まで自分で完結して、一貫したものづくりができるんじゃないかなと思いはじめたんですね。

―どこかでは信楽の可能性を感じていたということ?

それはあります。僕自身、信楽に育ってよかったなと思っていて、信楽って保育園から粘土が使い放題で、小学校にはそれぞれ窯があるんです。町を歩いてもタヌキとか、いろんな質感のもの、変なものが目につきますよね。高校へ進んだときに衝撃を受けたことがあって、いろんな町の中学校から生徒が集まっていたんですけど、信楽の子はみんな明らかに絵がうまかった。そのときに、信楽ってちょっとおかしな町だったんだなって(笑)。

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ショップは、信楽の中心街からは少し距離をとった立地。国道そばでアクセスはいい。

―信楽はやっぱり単なる地方都市ではないんですね。ただ、近年の信楽からはそれほど刺激的なニュースを聞くことはそれほど多くありません。

 東京から戻ることにしたのは2008年で、ちょうど手仕事とか民藝の再評価がはじまった頃。その空気をどこかで感じていたのかもしれません。もうちょっと見せ方をうまくやりさえすればやっていけるんじゃないかって。淡い希望があったんですけど、いざ戻ってみると……。

―いろいろやってみたけど、難しかったと。

作家さんは別ですよ。こうしたいという思いを個々で持ってられるので。ただ、産地全体としてとか、組合一丸となってというのは難しい。何年間かいろいろ試してみたけど、調整することが業務になるばかりで、これは無理だなと。もうひとつ僕が感じたのは、力がない状態で10社集まってもうまくいかないんです。それよりも、まずは切磋琢磨して、それぞれに力をつけた段階で数社集まってやり方を考えるとか、外からの力をうまく使うとか。そうやって産地をうまくプレゼンしていかないとダメだと気づきました。

―あきらめたわけではなく、やり方を変えて自分の立ち位置をより明確にするためにも独立して、ショップのオープンまでこぎつけたということですね。焼き物の産地が数ある中で、加藤さんは信楽のポテンシャルをどこに感じていますか。

 信楽は、産業ベースでエクステリア、インテリアまわりの大きな製品を作ってきた歴史があります。例えば火鉢や植木鉢、傘立てといったもの。だから、他の産地に比べて、大きな窯があるし、大きな道具も揃っている。植木鉢にしても60年代のカタログを見るとすごくデザイン的にもいいものがあって、だけど、誰もそこに注目していないので、僕らがあらためて商品化しています。椅子も同じで、80年代頃までは公共施設に随分入っていたみたいですが、廃れてしまっていて。でも、デザインをすこし見直せば、まだまだ可能性はあるんです。

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傘立て「ENTOTSU」とスツール「TONNE-ROPE」(左)紐でぶら下げることも、台に置くこともできる花器「vase」(右)。すべて「NOTA&design」オリジナルプロダクト。

―それで、NOTA&designで作られている商品は大きなものが多いんですね。

 エクステリアを作ってきたということは、釉薬への影響もあります。食器だったらそんなに奇抜な色を使いませんけど、エクステリアにはいろんな色の釉薬が使われてきました。だから、信楽の釉薬メーカーが歴史的に積み重ねてきた蓄積と経験には全然かなわないし、その上で相談しながら新しいものを作っていけるというのは、やっぱり信楽にいるからこそできることだと思います。そうした製品を作る前段階のプロフェッショナルが揃っていて、一緒にものづくりができる強みはすごく感じています。なにより楽しいですね。

―ちょっとしたディレクションで引き出せる可能性があふれている。minä perhonenの店舗什器やクリンスイとの共同商品などの仕事を行っており、外部からのつなぎ役にもなっているように見えます。

 昨年までgrafの服部滋樹さんのディレクションで行われていた、滋賀県のブランディングプロジェクト「MUSUBU SHIGA」からのつながりが大きくて、本当にありがたいことだと思っています。そうしたクライアントになる方がいて、産地に作る力があるとして、僕がそこで重要だと考えているのは、翻訳能力なんです。クライアントが求めるテイストに対して、産地の知識やノウハウをいかにつなげられるか。それがないと、クライアントに対して、ただの下請けになってしまうし、そもそもうまくいかないことが多いと思います。

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2015~17年度に行われた「湖と、陸と、人々と。MUSUBU SHIGA」プロジェクト。「MUSUBU SHIGA」からのつながりで、琵琶湖産の真珠「ビワパール」の貝殻を陶土と釉薬に使うというプロジェクトにも加藤さんは関わっている。

―加藤さんの信楽における役割は、まさにその翻訳力だと。どうして加藤さんにはそれができるんでしょう。

 それは、僕がここまで焼き物一筋で来たわけではなくて、大学時代は音楽や映像に詳しい先輩とよく一緒に遊んでいたりとか、ロンドンに1年留学したり、IDEE experienceでアルバイトしたり。そこで見聞きしたことや経験が生きてるのかなと思います。あとは、クライアントの人と打ち合わせるときに、NOTA&designのショップやスタジオ、僕の家でやることが多いのですが、そこにどんなものが置いてあって、どんな空間になってるかということからも伝わるものが多いんじゃないかなと。

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大きなプロダクトを作るための設備も揃った工房。ショップと工房あわせて、加藤さん夫妻の他にスタッフは2人。

―本来、舞台裏であるような製造現場のスタジオまで、すごく絵になる空間になっている理由はそこなんですね。ものづくりの現場でなかなかそこまで意識できませんよ。

空間が与えるイメージってすごく重要です。NOTA&designのショップとスタジオでも空間の雰囲気は違っていて、僕らが作っているものはショップよりも、スタジオ空間の雰囲気にあったプロダクト。それでショップにはあまりたくさん置いてないんです。

―自分たちの商品をあまり置かないほど徹底していますか!

ショップは木造の印象が強いので、やっぱりそこに合わせないとイメージがよくないですから。働く場所であるスタジオも当然、ものと空間の関係があって、そこで何が美しく見えるのか、面白いのか、その実験する場所でもあると考えています。僕らが作っているのは、決して機能的なものじゃないから、暮らしに対してどんな提案ができるのか、どんな物差しで作っているのかはすごく大事なこと。「中国から安いものがどんどん入ってきてるから信楽なんてもうダメだ」っていう信楽の人がいたんですけど、聞いたら、その人自身の暮らしの中で日本のものを全然買ってもないんですよ。ものや生活にまるで興味がないんだなって。もともと僕がそういうものが好きだということもあるけど、仕事にしているわけだから、より意識的にやっていかないといけないとは思っています。

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石膏型を使った成形も手がける奥さまの佳世子さんとは多くの作業を分担。撮影は息子さんも一緒に。

―まずは堂々たる拠点を構えて、まだこれからやることが目白押しだと思いますが、この先にどんな未来を描いているか教えてください。

信楽をものづくりの町としてプレゼンしていくことはそうなんですけど、そのためにもNOTA&designのショップでは焼き物に限らず、アートでもライブでも料理教室でも総合的にやっていくつもりです。できることなら、信楽から発信する独自のメディアも作っていきたい。僕は、まだ33歳ですけど、ここからまだ何十年も生きていかないといけないし、ここで生きていくと決めました。となると、ただ待っているわけにはいかないし、ほんとにしないといけないことをやったほうがいい。まあ、いろいろ全然追いついてなくてヤバいんですけどね(笑)。

NOTA SHOP
滋賀県甲賀市信楽町勅旨2317
tel. 0748-60-4714
営業時間/11:30〜18:00
火曜、不定休
https://nota-and.com/shop/
※「NOTA&design」に併設

INTERVIEW

TEXT BY ATSUSHI TAKEUCHI

PHOTOGRAPHS BY MASUHIRO MACHIDA

17.11.02 THU 18:28

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