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「京表具 藤田月霞堂」

INTERVIEW

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若手職人が語る、伝統工芸の仕事ライフ vol.1
「京表具 藤田月霞堂」

伝統工芸の新たな担い手として働く若手職人に、就職のきっかけや仕事のやりがい、失敗談など、リアルな職人生活を語ってもらうインタビュー連載。 第1回目は、上七軒の「京表具 藤田月霞堂(ふじたげっかどう)」で働きはじめて9ヶ月目の間部ななせさんにお話を伺いました。京表具とは軸装・額装、屏風、画帖、巻物や襖、壁装など布や紙などで仕立てられた様々なものを指し、その仕立てや修復に携わる職人を表具師と呼びます。今年の春「京都伝統工芸大学校」を卒業し、「藤田月霞堂」の工房に入った間部ななせさん(23)。主な仕事は表具の修復作業です。

 

間部ななせ|1993年生まれ。静岡出身。京都伝統工芸大学校蒔絵専攻卒業後、2016年4月より現職に至る。

間部ななせ|1993年生まれ。静岡出身。京都伝統工芸大学校蒔絵専攻卒業後、2016年4月より現職に至る。


ーー 現在の仕事内容を教えてください。

間部:掛軸や額の修復をしています。表具は通常、絵が描かれている『本紙』の裏に、2〜5枚の『裏紙』と呼ばれる和紙が補強のために重ねて貼ってあります。その裏紙を全部剥がして、本紙の汚れを水で洗い落として乾燥させ、最後に裏打ち用の和紙に糊を塗るまでが私の主な仕事です。

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裏紙を剥がし、一枚となった本紙を桶に入れて水で綺麗に洗い流す。


ーー 作業の中で難しいことはありますか?

間部:やはり裏紙を剥がす作業です。表具は修復することを前提として作られるので、年数が経ってから裏紙を水で剥がしやすいよう澱粉糊を使って仕立てられているのが普通です。しかし、稀に薬品を使ってもどうしても剥がれない、なにで貼っているのか分からない物に出会うことがあります。本紙がボロボロで裏紙も全然剥がれなくて、剥がすだけで2日間費やしたこともありました。

ーー 想像するだけで大変そうですね。では、作業で面白いことは?

間部:本紙の汚れを洗い落とす作業で、汚れがたくさん出てきて、絵や文字が綺麗に現れて見えた時は気持ちがいいです。そして、洗い上げた本紙が再び仕立てられ、美しい掛軸や額の状態になった姿を見た時には感動があります。裏紙を剥がす作業が上手くいかない場合も、どうしたら綺麗に剥がせるか考えるのも楽しいです。

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裏紙を剥がし、一枚となった本紙を桶に入れて水で綺麗に洗い流す。

 

「修復から完成までの作業手順を覚えるだけなら5年程だけど、表具によって違う糊の具合などを見極めて、間違いの無いように仕立てるのは難しいですね。表具師歴45年の父も未だに悩みながら作業をしています。」と師匠の藤田竜也さんは語ります。

また、仕事内容を伝えていく難しさもあるようです。

「昔の職人さんは『技は見て盗め』とよく言ったもので、職人の世界は数字や言葉で伝えきれない部分が多々あります。教科書を見ながら独学で学べるようなものではなく、師匠の仕事をそばで見ることで技術や知識を身につけていかないと伝えられない技術です」と藤田さん。

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作業を教える藤田さん(左)と真剣に話を聞く間部さん(右)。

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間部さんはカレンダーにこれまで作業した作品の点数を記録している。4月の入社時から12月まで約180点の作品の修復を手がけた。


ーー 工芸の仕事に興味を持ったきっかけを教えてください

間部:静岡県の高校でデザインを専攻していて、授業でデッサンや服飾デザイン、キャラクターデザインなど様々な分野の勉強をしましたが、一番楽しかったのは、絵を描く事よりも手を動かして物を作ることでした。また、家で祖母が自分で糸を藍染して機織りをしていたり、日本の伝統文化や工芸のテレビ番組を家族で見る事がよくあり、関心を持ちました。

ーー いつ頃から修復に興味を持ちましたか?

間部:高校生の時にテレビ番組で工芸品を修復する仕事があることを知り、修復に関わる事を勉強したいと考えていました。 高校卒業を前に、インターネットで「修復 工芸」と検索して、京都伝統工芸大学校を見つけて、有名な先生がたくさん在籍していたのが魅力的で第一志望で受験する事にしました。 大学では蒔絵工芸が専攻で、4年間は漆を使った作業に専念していました。

ーー 漆から、表具の工房である藤田月霞堂に入られたのはどうしてですか?

間部:最初は漆を使った修復の仕事を探して就職活動をしていたんですが、あまり見つからず、大学の就職支援担当の方から「修復の仕事をしたいならこういう道もあるよ」と藤田月霞堂さんを勧めてもらい見学に行ったのがきっかけでした。それまでは全く表具にも触れてなくて、掛軸の作り方も知らなかったのですが、新しい事に触れられることへの興味が湧いて「面白そう」「これだ!」と思い、面接を受けました。

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間部さんの好きだという本紙を洗う作業。

 

修復のためにお客さんから預かる額や掛軸は、他に一つとなく、これからも大切に使い続けたいという思いで持ち込まれる品物ばかり。古いもので700年前のものあります。

かけがえのないものを預かる以上、作業の失敗は許されません。そんな責任の重い「修復」という仕事でも、「出来ると思う事は彼女に任せてやってもらいます」と言う藤田さんと、「作業で分からないことや怖いと思った時には、すぐに師匠に確認をする」と言う間部さん。そんな話をお二人から聞いて、それぞれを信頼している良い師弟関係がある事で技は繋がれているのかもしれないと感じる事が出来ました。

京表具 藤田月霞堂
URL:http://gekkadou.jp

INTERVIEW

TEXT BY MASAHIRO FUJII

PHOTOGRAPHS BY YUUKI KIMURA

16.12.16 FRI 14:52

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